2. 生物学的基礎過程
A. DNA、染色体の損傷、異常、修復
(2013 61)
a. 初期損傷〈一本鎖切断、二本鎖切断、塩基損傷、塩基欠失、架橋形成〉
b. 染色体異常
c. 直接作用、間接作用
d.
修復〔相同組換え〈HR〉修復、非相同末端結合〈NHEJ〉修復、除去修復、誤修復〕
(2017 52、2016 53、2014 62、2013 61、2012 62)
○一本鎖の損傷
:大部分が数分以内に修復される
(1)
光回復:損傷の直接消去
(2)
除去修復:塩基、ヌクレオチド、ミスマッチの除去
(3)
組み換え修復
○二本鎖の損傷
:修復には数時間かかる
(4)
非相同末端結合
全細胞周期で起こりうる
切断端の損傷部位が取り除かれた後、直接ヌクレオチドが挿入されて再結合が起こる
間違った遺伝情報を持つようになる場合が多く、染色体の組換えなども起こしやすいので、細胞の機能を回復できない場合がある
(5)
相同組み換え修復
姉妹染色分体の存在する
S期の終わりからG2期に起こりうる
ヌクレアーゼとヘリカーゼによって一本鎖部分が残るように切断端の前後が切出され、損傷を受けていない相同な染色体DNAとの交叉が起こって正常染色体の遺伝情報を用いてDNA合成がなされ、最後に交差部分が切断・再結合されて修復を終える
間違った修復を起こさず、完全に回復する
e.
突然変異
○突然変異 (2017 53、2015 66)
・放射線の染色異常:構造異常(数の異常はおこらない)で線量率効果がある
・安全型:欠失、逆位、転座(欠失が多い)
・不安定型:環状染色体、2道原体染色体(G1,G2期の被ばく)
f. がん化
B. 細胞に対する作用
a. 細胞死 (2013 21)
〈増殖死、間期死、アポトーシス、ネクローシス〉
・ネクローシス
:能動的な死、遺伝子に組み込まれたプログラム
「細胞(核)の膨潤、溶解」「DNAの不規則分解」「炎症」「内容物消失」
・アポトーシス
:受動的な死、壊死
細胞形態「細胞の縮小」「クロマチン凝縮」「核断片化」「アポトーシス小体」
生物学的変化「DNA断片化」「カスピパーゼ活性化(タンパク質分解)」
「マクロファージに貪食される(炎症を起こさない)」
・増殖死(分裂死):低LETで多い
・間期死(アポトーシス):大線量が必要
b.
放射線効果モデル〈LQ モデル〉
(2017 54、2016 52、2015 65、2014 64、2013 64、2012 63)
D:線量
α:1本の放射線で2本鎖切断が起こる
β:2本の放射線で2本鎖切断が起こる → SLD回復に関係
αD=βD2のときの線量D=α/βとする(各組織・細胞毎の定数)
・早期反応組織(がんを含む)
α/βは大きい、肩は小さい
・晩期反応組織
α/βは小さい、肩は大きい
→ 回復力が大きい
大線量寡分割照射によって影響が大きくなる
・白血病のモデルになる
c. 回復
〈亜致死損傷回復、潜在的致死損傷回復、分割照射効果、線量率効果、分裂異常、分裂速度、増殖遅延、細胞周期チェックポイント〉
(2017 52、2016 53、2014 62、2013 61、2012 62 68)
・亜致死損傷回復(SLD回復、Elkind回復)
1回の照射で死に至らなかった細胞の回復
低LET放射線で多く、線量率効果がある
高LET放射線はほぼない、線量率効果はほぼない
12時間程度で回復
*線量率効果:低線量率の方が回復量は多いという効果
・潜在的致死損傷回復(PLD回復)
照射後の環境条件によって生存率の上昇が見られる回復
低栄養、低酸素、低pH、接触増殖阻害、定常増殖などの細胞を増殖抑制の起こる環境で発生
反対に通常修復されるPLDが修復されずに致死損傷として固定される場は高・低調液、カフェイン、βアラビノフラノシルアデニン、ヒドロキシウレア、ある種の抗がん剤などがある
1時間以内で回復するものと2~6時間で完了するものがある
*G0期
長いG1期で、タンパク合成が抑制される
G1チェックポイントで発生する
d.
化学物質
〈酸素効果、酸素増感比(OER)、放射線増感剤、放射線防護剤、低酸素細胞放射線増感剤〉
・低酸素細胞増感剤 (2015 64 70)
:ミソニダゾール
・放射線防護材(ラジカルスカベンジャー) (2017 51、2015 62 70、2012 61)
シスタミン:S-S結合をもつ
システイン/システアミン/グルタチオン:SH基(チオール基)をもつ
C. 感受性
a. 分化形態
b. 細胞種
c.
ベルゴニー・トリボンドの法則 (2013 63)
放射性感受性が高い細胞の特徴で以下の3つ
・分裂活発な(細胞周期の短い)細胞
・将来長期にわたり細胞分裂を継続する細胞
・未分化な細胞
*高感受性の細胞はアポトーシスを起こしやすい
d.
細胞周期
D. 生物学的効果比(RBE)
a. 線エネルギー付与〈LET〉
b. 線質係数
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