1. X線撮影、透視装置
A. X 線の性質
a. X 線の発生効率 → 物理学ノート → 電子と物質との相互作用
b. X 線スペクトル → 物理学ノート → 電磁波と物質との相互作用
c.減弱曲線と半価層 → 物理学ノート → 電磁波と物質との相互作用
B. X 線装置と付属機器
a. X 線管の構造と特性
○実焦点と実効焦点 (2017 32 、2014 24)
(実効焦点<実焦点)
・実焦点
管電圧が低い・管電流が大きい・ターゲット角度が小さい
→ 実焦点は大きくなる
実焦点面積が大きい
→ 短時間許容負荷が増す(X線出力を大きくできる)
最大許容入力が大きくなる(比例の関係)
・実効焦点
実効焦点面積が小さい
→ 幾何学的半影(画像のボケ)を小さくできる
・ヒール効果
:ターゲットからのX線強度分布がターゲット自身の吸収によって陽極側<陰極側となること
ターゲット角度が大きい・撮影距離が長い
→ ヒール効果が小さい(利用可能な放射角度が大きい)
ヒール効果が小さい
→ 最大照射野・有効照射野が大きくなる(利用可能な放射角度が大きくなるため)
・ビームハードニング
:線質は陽極側で硬くなる
○正焦点と副焦点 (2014 24)
フィラメントから発生する熱電子は集束電極によってターゲット上に集束するが電子密度は均等ではない
⇒
正焦点と副焦点の生成
・正焦点
:フィラメントの前面付近から発生した熱電子によって形成される焦点
・副焦点
:側方および後方から発生した熱電子によって形成される焦点
・集束電極の溝幅を狭く、深さを浅くするほど焦点寸法は小さくなる
・電子密度
:正焦点>副焦点
・ブルーミング効果
:マンモのように30kV以下の管電圧になると電子吸着が弱く、副焦点が広がる
○焦点外X線 (2016 32、2014 24、2012 記述)
★発生
:焦点に衝突する高速電子から発生した2次電子が焦点面以外のターゲット面に衝突して生じる
管電圧が高いほど多く発生する
★作用
:X線写真に一様なかぶりを与えるため、コントラスト、鮮鋭度を低下させる
除去:「付加フィルタ」「X線可動絞りの奥羽根」「鉛コーン」
★特徴
:焦点近傍で最も多く発生し、離れるほど減少する
線質は焦点近傍で最も軟質(低エネルギー成分のX線)で、離れるほど硬質になる
回転陽極管ではターゲット面積が大きいため、固定陽極管に比べて発生量は多い
○乳房撮影用X線管 (2016 32、2013 28)
1、軟部組織の撮影のために必要な軟X線を発生させる低管電圧用X線管(30kV)を用いる
★2、X線放射口(窓):発生X線を低減するためにベリリウムを使用
3、ターゲット(焦点部分):主にMoを用いる。特性X線を利用のためMoフィルタと組み合わせる
★4、付加フィルタ:乳房の大きさや乳腺の状態に合わせて以下のような組み合わせを用いる
ターゲット |
Mo |
Rh |
W |
Kα[keV] |
17.4 |
20.2 |
マンモ領域では利用しない |
Kβ[keV] |
19.6 |
22.7 |
付加フィルタの組み合わせ
「Rh陽極+Rhフィルタ」「W陽極+Rhフィルタ」
「Mo陽極+Moフィルタ」「Mo陽極+Rhフィルタ」
*乳腺含有率の高い場合、乳房圧の厚い場合:Rhフィルタを使用する
5、電極間距離:管電圧が低いため以下のことが起こる
エミッション特性が悪く、小焦点を実現するため、電極間距離は一般撮影より短い(約10mm以下)。
片側接地でも用いることができ、陽極接地することにより焦点外X線が減少し、陽極の冷却効果が得やすい
6、焦点寸法:密着撮影で0.3mm、拡大撮影で0.1mm
★7、ヒール効果の影響:被写体厚の薄い乳頭側に陽極(低線量)側を、胸壁側に陰極を配置する
8、圧迫板はX線吸収の少ないものを使う
9、自動露出制御(AEC)が行われ、AEC検出器はカセッテ後面に配置される
10、陽極回転速度:普通回転形3000回転/min 高速回転形9700回転/min
11、密着撮影では移動(運動)グリッドを用いる
12、乳房画像評価には専用のファントムがある
b. 固有ろ過、付加フィルタ
c. 散乱X 線除去用グリッド (2015 22、2016 記述)
・定義
:X線受像面に入射する散乱X線の量を減少させることで、X線像のコントラストと解像度を改善する
受像面の前に置いて使用する
★散乱X線の性質
:散乱X線含有率は照射野の大きさと被写体の厚さに依存する。高管電圧ほど高グリッドが必要
・構造
:薄い鉛箔とX線吸収の少ない中間物質(アルミ)の薄い板を交互に配置
散乱線除去用グリッドの中間物質はX線吸収の少ないもの
→アルミニウム、紙、木、合成樹脂
★○種類 (2015 22)
・直線グリッド
:箔を長手方向に平行になるように構成
・平行グリッド
:箔の延長が平行で入射面に垂直→集束距離は無限大、集束型よりもカットオフが多い
・集束グリッド
:箔の面の延長が1つの直線に集束
・クロスグリッド
:2枚の直線グリッドをそれらの箔の方向がある角度を持つように一体形成したもの
・運動グリッド
:ブッキーブレンデともいう
※病室撮影ではグリッドに対してX線が斜入する可能性が高いため、格子比の低いグリッドがよい
★○幾何学的性能 (2017 記述)
・グリッド密度N
:グリッド中心部でのl cm当たりの吸収箔の本数[cm-1]。30 ~ 100本/cm程度
N=1/(d+D)
・グリッド比
:グリッド中心部での吸収箔の高さと間隔の比。3:1~16:1程度
r=h/D
・集束距離
:集束グリッドの箔の面の延長が集束する線(集束線)からグリッド入射面までの距離[cm]
・使用距離限界
:診断に有効なX線像が得られる焦点 –グリッド入射面間距離 [cm]
平行グリッドでは下限値のみが、集束グリッドでは上限値と下限値が決まっている
h:吸収箔の高さ、d:吸収箔の厚さ、D:吸収箔の間隔
○物理的性能 (2017 記述、2015 22)
*上記の物理的性能は、グリッド比に比例、管電圧に反比例
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