電磁波と物質との相互作用
A. 種類
a. 直接電離放射線(荷電粒子)、間接電離放射線(光子、中性子)
b. (電離性)電磁放射線、粒子放射線
B. 電磁波と物質との相互作用
a. 古典散乱 〈トムソン散乱、レイリー散乱、コヒーレント散乱〉
(2016 記述)
・トムソン散乱(非干渉性散乱)
自由電子との相互作用
光子のエネルギーは変化せず、進行方向が変化する
・レイリー散乱(干渉性散乱)
軌道電子との相互作用
光子のエネルギーは変化せず、進行方向が変化する
b. 光電効果
(2012 05)
・光子のエネルギーEe = Er - Eb
Er:光子のエネルギー
Eb:軌道電子のエネルギー
・光電子エネルギー
K殻光電子 < L殻光電子
・吸収端
エネルギー:L吸収端 < K吸収端
・反応断面積τ ∝ Z5×Er-3.5
Z:ターゲットの原子番号
・光子の粒子性を示す反応
・光電ピーク(全エネルギーピーク)
:放出されたγ線がすべてのエネルギーを電子に与えて検出器に検出されるピーク
・入射光子のエネルギーがK殻電子電離エネルギーよりも大きい場合、
光電子の80%がK殻光電子となる
c. コンプトン効果
(2017 11 、2013 05、2012 06)
*θ:0~180度に散乱する
*Φ:0~90度に散乱する
・散乱光子のエネルギーEr′
$$Er′=\frac { Er }{ 1+\frac { Er }{ meC^{ 2 } } (1-cosθ) } $$$$=\frac { Er }{ 1+\alpha (1-cosθ) } $$$$*\alpha =1+\frac { Er }{ meC^{ 2 } }とする $$
・コンプトン電子のエネルギーEe
Ee = Er - Er′
$$=\frac { Er }{ 1+\frac { meC^{ 2 } }{ Er(1-cosθ) } } $$$$=\frac { Er\times \alpha (1-cosθ) }{ 1+\alpha (1-cosθ) } $$
・Ee maxのとき、Er′min
(180度散乱:コンプトン端)
Er′min = Er/(1+2α)
Ee max = (Er×2α)/(1+2α)
・Ee minのとき、Er′max
(0度散乱、反跳電子は90度散乱)
Er′max = Er
Ee min = 0
*meC2:電子の静止エネルギー
・反応断面積σ ∝ Z
*面密度[g/cm2]が同じであれば物質によらない
・光子の粒子性を示す反応
・コンプトン連続部
コンプトン散乱で生じた反跳電子がとる0から最大エネルギーEmaxまでの連続分布
・コンプトン端
散乱角が180度の場合に電子に最もエネルギーを与えて、光子が検出器から出ていく場所
コンプトン連続部の終わり
・後方散乱ピーク
検出器以外で後方散乱した散乱光子(最小エネルギーとなっている)が検出されて生じるピーク
d. 電子対生成
(2016 11)
・電子対のエネルギー
Ee++Ee = Er - 2×meC2
・反応断面積κ ∝ Z2
e. 三電子生成
(2015 08)
*三電子対生成:閾値2.044[MeV]
f. 光核反応
(2017 08)
高エネルギーγ線が原子核に当たると、ある確率で吸収され、原子核を励起し、そのエネルギーが原子核内の核子の結合エネルギーを超えると、核子は核外へ飛び出す
・反応断面積
γ線のエネルギーが15~20MeVで最大
・(γ,p),(γ,n),(γ,d),(γ,α),(γ,fission)などの反応が起こる。
(γ,n)は10~20MeVで起こりやすい
・閾値は存在する
だいたい結合エネルギーである8~10MeV程度
Q値は負
支配的相互作用
*水に近い組織(Z=7.5)において
0.05 MeV~10 MeVではコンプトン散乱が支配的(80%超)
*骨(Z=13)に近い高原子番号では
0.08 MeV~7 MeVではコンプトン散乱の支配するエネルギー範囲が狭い
*低エネルギー(数10 keV)
光電効果の影響により、水よりも骨に対する線量が高くなる。
*超高エネルギー(10 MV~25 MV)
電子対生成が生じやすいため、水よりも骨への線量が高くなる
G. X 線の発生
a. 遷移 b. クラマースの式 c. デュエン・ハントの法則 d. モーズリーの法則 e. X 線管ターゲット
H. 光子線束の減弱
a. 指数関数的減弱 b. 半価層、10 分の1 価層
(2017 14、2016 14 31、2013 55、2012 16)
・光子の強度I = I0×e-μx×B
・半価層X1/2 = ln2/μ
I0:初期X線光子量
μ:線減弱係数(cm-1)
x:物質の厚さ(cm)
B:ビルドアップ係数
B=(ある点に到達する全光子による線量)/(非散乱一次光子による線量)
・半価層の測定方法 (2013 55)
付加フィルタ:21mmAl
半価層用付加フィルタ:7.1mmAl
焦点-ディテクタ(ディテクタを取り除ける場合は線量計)距離:150cm以上
線量計と壁や床(ディテクタを取り除けない場合はディテクタ)の距離:45cm以上
ディテクタに入る照射野サイズ:160mm2以上
c. ビルドアップ係数 d. スペクトル効果、線質硬化と軟化
e. 減弱係数、エネルギー転移係数、エネルギー吸収係数
(2016 62)
・質量減弱係数μ/ρ
μ/ρ = (τ+σ+κ)×N÷ρ
N:1cm3中の原子数
ρ:物質の密度
・質量エネルギー転移係数μtr/ρ
$$μtr/ρ=[(1-\frac { δ }{ Er } )×τ+(1-\frac { hν^{ ‘ }-δ }{ Er } )×σ+(1-\frac { 2mC^{ 2 } }{ Er } )×κ]×N÷ρ$$
δ:特性X線の平均エネルギー
・質量エネルギー吸収係数μen/ρ
μen/ρ = μtr/ρ×(1‐G)
G:制動放射により失われる二次電子のエネルギーの割合
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